株式会社スパークル

実践ガイド(Web版)

販売店経由のBtoB広告で、何を成果として測るか

売上までを直接追えない場合は、購入に関わる人と止まっている行動を整理し、Webで確認できる情報と営業・販売店から得られる情報を組み合わせます。指標は、増減したときに何を決めるかと一緒に定義します。

対象
販売店・代理店を通じて製品を売るメーカーで、広告の成果を報告する方、営業企画・販売店支援の方。
読み終えると作れるもの
  • 関係者と成果の地図
  • 成果と判断の1枚(指標と、動いたときに決めること)
  • 指標の定義票
  • 会議で決められる月次報告の型
Web版の公開
更新
元資料
『売上につながる途中を、どう測るか。』2026年9月版・v2.0
編集
株式会社スパークル

このガイドで作るもの

元資料:PDF p.1〜3

販売店・代理店・卸を通じて売る製品では、広告の先に複数の人と組織が挟まります。同じ月次レポートを見ても、立場によって聞きたいことが違います。広告担当は「クリックも問い合わせも増えた。でも売上はどうなったのかと聞かれると答えに詰まる」。営業は「広告からの問い合わせは、うちの製品が合わない案件ばかり」。経営は「認知が上がったと言われても、来期の予算を決める材料にならない」。

このガイドは、売上まで一直線に追えない構造の中で、どこまでを確かめるかを決める方法をまとめたものです。指標を「測れるから測る」のではなく、次の判断のために選びます。営業・販売店からは、協力が得られる範囲で情報を集めます。最後に、会議で決められる報告の1枚にまとめます。

扱わないのは、媒体ごとの設定手順や入札の操作です。広告予算の配分の判断は、別のガイド「CPAが下がったのに問い合わせが減るとき」で扱っています。

先に、完成形を見ておく

このガイドで作るのは、「成果と判断の1枚」です。事業上の成果から出発し、止まっている行動を特定し、観測する指標と「動いたときに決めること」を対にします。指標が単独で並ばず、Webの数字と営業・販売店から集める情報が同じ表にあり、まだ確認できないことを隠さずに書くのが特徴です。

成果と判断の1枚:製品X(新型センサー)2026年下期説明用の架空例
止まっている行動(仮説)観測指標計測元増減したら決めること
販売店の営業が、既存品との違いを顧客に説明できない比較資料の営業利用回数(週次)と、営業から戻った質問の件数営業日報/販売店への聞き取り利用が伸びず質問が同じ → 資料を改訂。利用は伸びるが受注が動かない → 価格・納期の条件を営業と確認
使う人が「自社の用途に合うか」を判断できない適格問い合わせ数(用途・規模が対象に合う問い合わせの内数)フォームの項目+営業の一次判定総数は増えるが適格が増えない → 製品ページの適合条件の説明を修正。適格が増える → 販売店への引き渡し手順を整える
そもそも対象の顧客に届いていない製品ページに来た人のうち、対象業種の割合(任意で立場を答えた人)GA4+フォームの任意項目割合が低い → 配信先と訴求を見直す。割合は高いが次の行動が少ない → 説明の問題として上の行へ
事業上の成果:製品Xを主要販売店20社の推奨品目に入れてもらう(下期)。確認できている事実:製品ページの訪問は前期より増加、問い合わせは月2〜5件で、うち対象用途は半数以下(営業の一次判定)。まだ確認できないこと:販売店経由の受注のうち広告を見た顧客の割合、広告を止めた場合との差。見直し時期:販売店が翌年度の品目を決める1か月前。

説明用の架空例産業用計測機器メーカー・販売店経由・検討期間3〜6か月という設定の架空のケースです。実在の企業・数値ではありません。

いま、やることいま社内で一番よく聞かれる質問を一つ、書き留めておいてください。最後の「報告の1枚」は、その質問に答える形で作ります。

商流と関係者を書き出す

元資料:PDF p.4〜5

最初に、自社の商流と手元の情報を書き出します。点数は付けません。確かめたいのは「誰が購入に関わり、どの情報が手元にあるか」という事実だけです。空欄が多くても問題ありません。あとで「誰から集めるか」を決める材料になります。

自社の商流と情報の書き出し記入例は架空
確認項目記入例
製品の購入者と使用者購入の決裁は工場の設備担当。使うのは保全担当。両者が別の場合が多い
推奨する人(推奨者)販売店の営業。案件によっては設備メーカーの設計担当
販売の経路販売店経由が9割。直販は既存の大口だけ
検討にかかる期間問い合わせから受注まで3〜6か月。予算期に集中
Webで取れている行動データGA4のページ閲覧・フォーム送信、広告管理画面のCV。資料ダウンロードは計測していない
営業側で取れている情報日報に案件名と進捗。問い合わせの中身は個人のメールに残る
販売店から得られる情報主要5社は月次で引き合い数を口頭で共有。数字の共有は未整備
いま「成果」として報告しているものクリック数・CV数(フォーム送信の総数)・CPA
その報告で答えられない質問「問い合わせは増えたが売上は?」「販売店はどう見ている?」

書き出すと、「成果として報告しているもの」と「答えられない質問」のあいだに、測っていない行動があることが分かります。その行動の多くは、Webではなく営業や販売店の手元にあります。だから指標の設計は、計測の設定の話ではなく、誰に何を聞くかの合意から始まります。

誰が購入を動かすのか:関係者の地図

広告が届く相手(使う人・買う人)と、実際に銘柄を決める場面に立ち会う相手(推奨者・販売店・自社の営業)は別です。関係者を一枚に描き、それぞれが「何をしてくれると購入が進むか」を書き込みます。

関係者の地図 説明用の模式図

自社(メーカー)

  • 広告・製品情報
  • 営業・技術サポート

広告が直接届く先

使用者

現場で使い、不満を持つ。購入者に要望を上げる

購入者

予算と決裁を持つ。販売店へ発注する

購入を動かす場面(見積・推奨・仕様の指定)

販売店・代理店

在庫を持ち、見積を出す。推奨する品目を決める

推奨者

設計者・指導員・コンサルなど「これを使え」と言う人。仕様を指定する

  1. 広告
  2. 使用者・購入者の行動
  3. 販売店・推奨者の動きやすさ
  4. 受注
図の説明:自社は、広告(検索・動画・展示会)で使用者と購入者に、営業訪問・資料・説明会・技術情報で販売店と推奨者に働きかけます。使用者は購入者に要望を上げ、推奨者は仕様を指定し、販売店は見積と推奨を出し、購入者が販売店に発注して受注になります。広告が直接届く先と、購入を動かす場面は別の場所にあります。

この図から、成果は「広告 → 購入」ではなく、「広告 → 使う人・買う人の行動 → 販売店・推奨者の動きやすさ → 受注」の連鎖で見ることになります。自社の営業は、販売店と推奨者に向けて働きます。営業と広告が同じ目的を共有しているかが要点です。

業種によって関係者が増える例
業種関係者の例
産業機器商社・設備メーカー・工場の保全部門
建材・住設設計事務所・工務店・施主
動物薬・畜産獣医師・飼料会社・生産者
組織名を書き換えれば、同じ図で使えます。関係者が増えるほど「推奨者」の欄を分けて描きます。

いま、やること記入シートAに、自社の関係者と「してくれると購入が進むこと」を書き込む。分からない項目は「誰なら知っているか」を書いておく。

確かめられる範囲を分ける

元資料:PDF p.6

同じ地図の上に、情報の取れ方を三つの層で重ねます。目的は見えない部分を無理に見えるようにすることではなく、どの情報を誰から集めれば判断を進められるかをはっきりさせることです。

情報の三つの層

① データで確認できる
  • 広告の表示・クリック
  • 製品ページへの到達、滞在
  • フォーム送信(総数)
  • 資料ダウンロード
  • 販売店検索ページの利用
  • 任意で答えた立場の区分

取得元:広告の管理画面/GA4/フォーム

→ 観測する指標として使える

② 現場に聞けば補える
  • 問い合わせの中身(適格か)
  • 見積の有無と進み具合
  • 販売店の引き合い数(集計)
  • 営業が資料を使った場面
  • 推奨者からの質問・反応
  • 展示会で話した内容

取得元:営業日報/販売店への聞き取り/CRM

→ 聞き方と頻度を決めれば使える

③ まだ確認できない
  • ほかの経路で買った顧客が広告を見ていたか
  • 広告を出さなかった場合との差(増分)
  • 推奨者の判断に広告がどれだけ影響したか
  • 受注のうち広告がきっかけの割合

→ 仮説として書き、報告に「未確認」として残す

①だけで作った報告は「クリックは増えた」で止まります。②を月に一度でも足すと、「問い合わせの半数は対象外の用途だった」「販売店が欲しいのは比較資料だった」という、次の判断につながる事実に変わります。

一方で、③を①②の言葉で語らないことが大切です。「広告経由で受注が増えた」は、多くの場合③に属します。前後の比較や経路の説明は、貢献の仮説であって因果の証明ではありません。報告では「確認できた行動」と「貢献の仮説」を分けて書きます。

いま、やること「商流と関係者」で書き出した「答えられない質問」が、①②③のどこに当たるかに印を付ける。②なら、誰にいつ聞くかを「件数とデータが少ない場合」の三段階で決める。

指標を決める五つの手順

元資料:PDF p.7

「測れるから測る」ではなく、「次に何を決めるために測るか」を一貫させます。手順は五つです。

  1. 事業上の変化を決める:今期、この製品で起こしたい変化を一つに絞る。
  2. 止まっている行動を特定する:その変化に関わる人と、いま止まっている行動を書く。
  3. 行動を表す指標を選ぶ:その行動が動いたと分かる観測指標を選ぶ。
  4. 動いたときの判断を決める:増えたら、減らなかったら何を変えるかを先に決める。
  5. 定義・取得・担当・時期を合意する:数え方、取得元、誰が見るか、いつ見直すか。
五つの手順の記入例:製品X(新型センサー)説明用の架空例
手順記入内容記入時に確かめたこと
1 事業上の変化製品Xを主要販売店20社の推奨品目に入れてもらう(下期中)「売上◯%増」ではなく、誰の何が変われば売上が動くかまで下りた表現にする
2 止まっている行動販売店の営業が既存品との違いを説明できず、既存品を勧め続けている。使う人は適合条件が分からず問い合わせに至らない営業3名と販売店2社に聞いた。仮説であることを明記した。「認知が足りない」で片付けない
3 指標a. 比較資料の営業利用回数と戻った質問数 b. 適格問い合わせ数 c. 製品ページに来た人のうち対象業種の割合aは現場の確認、b・cはデータ+営業の一次判定。問い合わせの総数は「観測用」に下げた
4 動いたときの判断aが伸びず質問が同じ → 資料を改訂。bの総数だけ増える → 製品ページの適合条件の説明を修正。cが低い → 配信先を見直す判断を先に書くと、指標が「見て終わり」にならない。判断が書けない指標は外す
5 合意適格=用途が対象の3分野で、規模が基準以上。取得はフォームの項目+営業の一次判定(週次)。集計はマーケ担当、判定は営業課長。見直しは11月末定義票に転記。営業の作業は週5分以内に収まる形にした

いま、やることいまの指標を一つ選び、「増減したら何を変えるか」を一行で書く。書けなければ、その指標は観測用です。

行動と指標を定義する

元資料:PDF p.8〜9

行動の種類と質で分ける

「問い合わせが一番上、資料ダウンロードはその下」という一律の順位は、自社の商流に合わないことがあります。行動ごとに、そのままでは分からないことと、追加して確かめることを決め、使い道を分けます。

観測した行動と、使い道の分け方
観測した行動そのままでは分からないこと追加して確かめること主な使い道
一般の問い合わせ営業の対象か、採用・売り込み・サポートの相談か内容の区分、対象製品、次の対応(営業の一次判定)報告用(適格の内数だけ)
見積・デモの依頼導入の条件に合うか、検討が実際に進んでいるか用途、時期、対応の可否、販売店の関与報告用・最適化用
技術資料のダウンロード仕事で使うのか、対象の企業か任意の立場区分、資料の内容との適合、追える範囲の後続行動観測用(条件つきで最適化用)
販売店検索・遷移実際に来店・相談したか販売店への確認、簡単な事後の調査観測用・販売店との共有用
製品詳細の閲覧・動画の視聴理解や購入の意向が生じたか次の閲覧・行動、調査への回答など観測用(報告には載せない)
観測用
動きを見る指標。増減しても単独では判断しない。月次報告の本文には出さず、付表に置く。
報告用
事業への報告に使う指標。質を確かめたものだけ。件数の隣に定義と集計条件を必ず書く。
最適化用
広告媒体の自動最適化に渡す指標。ある程度の量が必要なため、報告用と一致しないことがある。

資料ダウンロードと見積依頼を足した「CV数」は、月ごとに内訳が変わると意味が変わります。全部を同じ「CV」として合算しないでください。対象に合う重要な行動が少ない場合は、補助の指標を選ぶ理由と、あとで質を確かめる方法をセットで書いておきます。

数字の隣に、定義を置く

同じ「問い合わせ数」でも、数え方が違えば別の数字です。報告に載せる指標には、行動名・計測元・集計単位・期間・対象を、表の中に隣り合わせて書きます。脚注に小さく押し込まないことが要点です。

指標の定義票:製品X説明用の架空例
指標名数える行動(定義)計測元単位期間・確定日使い道増減したら決めること
適格問い合わせ数フォーム送信のうち、用途が対象の3分野で規模が基準以上と営業が一次判定したものフォームの項目+営業の判定(週次)件(企業単位で重複を除く)月次。翌月10日に確定報告総数が増え適格が横ばい → 適合条件の説明を修正
比較資料の営業利用営業が販売店・顧客に比較資料を使った回数と、その場で出た質問営業日報(自由記述を週次で集計)回/件週次報告利用が増え質問が同じ → 資料を改訂。利用が減る → 営業へ再説明
対象業種の到達率製品ページに来た人のうち、任意の立場区分で対象業種を選んだ人の割合GA4+フォームの任意項目%(回答者ベース)月次観測低下 → 配信先・訴求の見直し候補として翌月に検討
フォーム送信(総数)すべてのフォーム送信。採用・売り込みを含むGA4のキーイベント件(イベント単位)月次最適化単独では判断しない。適格率の分母として使う

定義票があると、「先月と数え方が違う」という会議のやり直しがなくなります。営業と広告担当が「適格」の意味を共有でき、数字が動いたときには、判断の欄に次の一手がすでに書いてあります。

いま、やること記入シートBの定義票に、報告用の指標を2〜3個だけ書く。「増減したら決めること」が埋まらない行は、観測用に移す。

件数とデータが少ない場合

元資料:PDF p.10〜12

「問い合わせゼロの月」をどう扱うか

ゼロという数字は、「広告が効いていない」の証拠にも、「計測が壊れている」の証拠にもなります。結論を急がず、確かめる順番を決めておきます。

問い合わせが少ない月に確かめる順番
確かめること具体的な見方分かること
1 計測の不具合か、実際のゼロかフォームの送信テスト、GA4のイベントの発火、サイト改修・タグ変更の履歴、営業のメールに直接来た問い合わせの有無「ゼロ」が事実かどうか。ここを飛ばすと、以降の議論が意味を持たない
2 観察期間は検討期間に合っているか検討期間が3〜6か月なら、月次の件数では判断しない。四半期、または予算期をまたぐ期間で件数と率を見る月次のゼロが、時期のずれにすぎない可能性
3 対象の顧客に届いているか流入の業種・地域・検索語、任意の立場区分の回答、展示会や営業で聞く「見た」という声量の問題(届いていない)か、質の問題(届いているが違う人)か
4 必要な説明があり、次の行動ができるか製品ページで適合条件・価格帯・導入の手順が分かるか。問い合わせ以外の行動(資料・販売店検索)はあるか届いているのに止まる場所。説明の不足か、導線の問題か
5 Webの外で何が起きているか営業に「最近よく聞かれる質問」を聞く。販売店に「引き合いの変化」を聞く。資料が使われた場面を集めるWebの数字がゼロでも、現場が動いているかどうか
6 何をいつまで確かめるかを決める小さな増減から結論を出さない。「◯月末までに△を確かめて判断する」と書き、報告の未確認事項に残す判断を保留する条件がはっきりする

成果が少ないからといって、動画の視聴や滞在時間を「売上の代わり」にすると、次の期も同じ会議になります。補助の指標を使うなら、それが問い合わせにどうつながる仮説なのかと、いつ質を確かめるかを一緒に書きます。ゼロの月にできる一番よいことは、5を丁寧にやることです。営業と販売店の声は、Webの数字がゼロでも取れます。会議の議題を「広告は止めるべきか」から「何が止まっているか」に変えられます。

販売店のデータが戻らない前提で、三段階で始める

「販売店からデータをもらう」は、多くの会社で最初の壁です。完全なデータ連携を待たず、協力が得られる範囲で始めます。段階が上がるほど分かることは増えますが、下の段階でも判断は進みます。

販売店・営業との共有の三段階
協力の得られ方最小の運用分かること・限界担当頻度
A 個別の案件を共有できる問い合わせのIDと、営業の対応状況(見積・失注・受注)を突き合わせる。CRMがなければ表計算で可確認できた案件の進み具合。ただし、全案件や広告との因果を把握できるとは限らない営業事務+マーケ担当週次
B 集計値だけ共有できる製品・時期別の引き合い数、見積数、受注数を販売店から集計値でもらう全体の傾向と季節性。広告の変更と時期を並べて見られる。個別には結び付けられない営業担当(販売店の訪問時に)月次
C 数値の共有は難しい協力先への定期的な聞き取り。質問を固定し、記録を残す障壁や現場の変化。代表性や件数の推定には限界がある営業担当月次(訪問のついで)

Cから始めて構いません。固定した質問なら、営業の負担はほとんどありません。三か月続けると、Webでは見えなかった「説明に困る点」が繰り返し出てきます。それが次の制作物(比較資料やよくある質問)の材料になり、Bに上がる交渉の材料にもなります。

営業に頼む作業は「週5分」に収めます。適格かどうかの一次判定は、選択肢を3つに絞った1問で済む形にします。自由記述を増やすほど、回答は途切れます。集計と整形はマーケ側が引き受け、営業には結果を返す(「先月の適格率は◯%、資料への質問はこれ」)ことで続きます。

いつ見て、いつ動かすか

業界で一律の「月別の出稿表」ではなく、相手側の意思決定の時期(販売店の品目決定、顧客の予算期、展示会)から逆算して、指標を見る時期と広告を動かす時期を置きます。

意思決定の時期から逆算する記入例は架空
相手の意思決定時期の例指標を見て判断する時期
販売店が翌年度の品目を決める12月中間:まだ動かせる時期に一度。最終:決定の1か月前(11月)
顧客の予算が確定する3月最終:決定の1か月前(2月)
広告の訴求は、検討の進み方に合わせて「認知 → 説明 → 比較」と変えます。同じ広告文を一年中出しません。予算期が違う顧客層が複数あるなら、行を分けて書きます。

業種によって「相手の意思決定」に入るものが変わります。産業機器なら顧客の設備投資の予算期、建材なら着工期や補助金の申請期などです。行の項目は同じで、中身だけを入れ替えます。分からなければ、営業に「販売店はいつ翌年の品目を決めるか」を聞くところから始めます。

ケースと報告の見本

元資料:PDF p.13〜15

一つのケースを、最初から最後まで追う

ここまでの手順を一件のケースで通します。数字は構造を示すための架空の値です。

ケース:産業用計測機器メーカー・製品X・6か月説明用の架空例
段階内容
出発点広告費は前年並み。製品ページの訪問は増えたが、問い合わせは月2〜5件で横ばい。営業は「来る問い合わせは用途が合わない」と感じていた。報告はクリック数・CV総数・CPAの三つ
制約販売店からの数値の共有はない(段階C)。製品ページの改修は年1回の予算枠。営業3名は日報以外の入力を嫌う
確かめたこと過去6か月分の問い合わせを営業と一緒に分類し、対象用途は4割と分かった。販売店2社への聞き取りでは「既存品との違いを説明できる資料がない」が共通。製品ページは仕様表が中心で、どんな現場に向くかの説明がなかった
仮説止まっているのは「認知」ではなく「説明」。使う人は自社の用途に合うか判断できず、販売店は違いを説明できない
選んだ指標報告用:適格問い合わせ数、比較資料の営業利用回数。観測用:対象業種の到達率、フォームの総数。「CV総数」は報告から外した
見送った案広告費の一律増額(届いていないのではなく、止まっているため)。動画広告の追加(認知の課題ではないため次期に回す)
実行したこと製品ページに「向く現場・向かない現場」の説明を追加。販売店向けの比較資料(A4・1枚)を作り、営業経由で配布。広告文を「高精度」から「◯◯の現場向け」に変更。予算は変えていない
3か月後に観測したことフォームの総数はほぼ横ばい。適格問い合わせは月1〜2件から3〜4件へ。比較資料の利用は週に数回で、戻った質問は「納期」と「既存設備との接続」に集中
限界販売店経由の受注との結び付きは未確認(段階C)。同じ時期に展示会があり、その影響を分けられていない。3か月・数件の変化で、統計的な差とは言えない
次の判断「納期」「接続」の質問に答える資料を追加。販売店2社と段階Bの集計共有を交渉。広告予算は据え置き、指標を続けて観察

このケースで見てほしいのは、成果の大きさではなく、何を確かめ、どの仮説を捨て、なぜその施策を選んだかの順番です。数字が小さくても、この順番があれば社内で説明できます。逆に、このケースから「広告の改善で受注が増えた」とは言えません。確認できたのは、適格問い合わせと資料の利用の変化までです。受注への貢献は、仮説として報告に残します。

同じ数字から、違う打ち手を選ぶ

「訪問は増えたが問い合わせが少ない」という同じ数字でも、止まっている場所が違えば打ち手は変わります。三つの見立てを並べ、どの情報で見分けるかを示します。

三つの見立てと、見分ける情報
見立て状況先に確かめる情報打ち手やらないこと
A 認知の不足訪問は増えているが対象業種の割合が低い。検索語が製品名ではなく一般的な語ばかり対象業種の到達率、検索語、営業が「聞いたことがある」と言われるか配信先と訴求の見直し。展示会・業界媒体との組み合わせ製品ページの大改修(届いていない段階では効果を測れない)
B 説明の不足対象業種は来ているが製品ページで離れる。用途の合わない問い合わせが多い適格率、営業が受ける質問の内容、販売店の「説明に困る点」適合条件・比較・導入手順の説明を整える。比較資料を営業経由で配る広告費の一律増額(止まっている場所に人を増やすだけ)
C 販売への接続の不足適格な問い合わせは来ているが、販売店に引き渡したあとの進み具合が分からない・止まる引き渡し後の対応状況(段階A・B)、販売店の在庫・見積の有無引き渡しの手順と販売店へのフォローの設計。販売店向けの資料・説明会広告文の修正(Webの問題ではない)

自社の直近の数字を当て、A・B・Cのどれに近いかを一つ選びます。二つ以上に当てはまるなら、先に確かめる情報を一つだけ取りに行きます。

会議で決められる報告の1枚

グラフを並べた月次レポートは、見終わっても何も決まりません。報告は「確認できた事実」と「解釈」を分け、決めてほしいことと、まだ分からないことを必ず載せます。

製品X 月次報告(11月)説明用の架空例

今月確認した事実
適格問い合わせ4件(前月3件。定義は定義票のとおり)。フォームの総数11件。比較資料の営業利用は週3〜5回、戻った質問は「納期」「既存設備との接続」。販売店2社への聞き取り:「比較資料は使える。接続できるかを一枚で欲しい」。広告予算は据え置き
現時点の解釈
説明の不足という見立ては続いている。次の障壁は「接続の可否」。別の説明として、10月の展示会の影響で問い合わせが増えた可能性があり、広告だけの効果とは言えない
次に行うこと
「既存設備との接続」の対応表(A4・1枚)を12月上旬までに作り、比較資料と一緒に配る。製品ページの適合条件の欄に同じ内容を追記
今回行わないこと
広告予算の増額(届く量ではなく説明が課題のため)。動画広告の追加(次期の認知施策として検討)
決めてほしいこと
① 接続の対応表の作成を技術部に依頼してよいか ② 販売店2社との集計共有(段階B)の交渉を営業課長に依頼してよいか
未確認のこと
販売店経由の受注と適格問い合わせの結び付き(段階Cのため未確認)。展示会の影響の切り分け(12月の件数で再確認)。3か月・数件の変化で、傾向とは断定しない
事実と解釈を同じ文に混ぜないだけで、報告の信頼は変わります。見送った案と理由を書くと、「なぜ広告を増やさないのか」が会議で蒸し返されにくくなります。分からないことを書いた報告のほうが、次に何を調べるかが決まります。

いま、やること最初に書き留めた「社内で一番聞かれる質問」に、この6項目で答えてみる。「決めてほしいこと」が書けなければ、指標を決める五つの手順に戻る。

最初の一製品で始める

元資料:PDF p.16〜18

全製品の指標を一度に設計しようとすると、定義の合意だけで期が終わります。一つの製品、一つの止まっている行動、報告用の指標2〜3個から始めて、報告の1枚を一度回してみてください。

最初の30日でやること
時期やること
1週目商流と手元の情報を書き出し、関係者の地図を描く。営業に「販売店はいつ品目を決めるか」を聞く
2週目直近の問い合わせを営業と一緒に分類し、「適格」の定義を決める
3週目販売店への聞き取りの固定3問を決め、営業に依頼する
4週目報告の1枚を一度作り、会議に出す。「決めてほしいこと」が一つあれば十分
進め方の一例です。社内の確認体制によって、かかる期間は変わります。

記入シート(印刷用)

記入例と同じ列構成の空欄シートです。シートごとに印刷できます。PDF版の巻末(p.17〜18)にも同じシートがあります。

シートA 関係者の地図

製品名:________ 記入日:____ 取れている情報は ① データで確認できる ② 現場に聞けば補える ③ まだ確認できない で印を付ける

シートA 関係者の地図(記入欄)
関係者組織名・部門してくれると購入が進むこといま取れている情報(①②③)誰に聞けば分かるか
販売店・代理店
推奨者
購入者
使用者
自社の営業
(その他)

シートB-1 成果と判断の1枚

製品名:________ 期間:____ 事業上の成果:____________

シートB-1 成果と判断の1枚(記入欄)
止まっている行動(仮説)観測指標計測元増減したら決めること

下に「確認できている事実」「まだ確認できないこと」「見直し時期」を書き添えます。

シートB-2 指標の定義票

シートB-2 指標の定義票(記入欄)
指標名数える行動(定義)計測元単位期間・確定日使い道増減したら決めること

使い道は 観測/報告/最適化。「増減したら決めること」が書けない行は観測用に回します。

シートB-3 販売店・営業との共有

シートB-3 販売店・営業との共有(記入欄)
段階(A/B/C)運用担当頻度・開始月